2008安吾忌レポート

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■2月17日 第54回「安吾忌」レポート

参列人数は50〜60名くらいだったかと思います。忌の進行は、例年とほぼ同じでした。開始時刻になったら、まず最初にみんなで献杯して、しばらくご歓談、それから安吾をめぐるさまざまな人が次々と壇上でスピーチをして進行していきます、そして後半ではここ数年恒例になっている「安吾カルトクイズ」10問をみんなで回答して楽しむ、という構成でした。時間帯としては、17時から19時30分過ぎまで盛り上がってました。

ただ、今年は冒頭から、厳粛な報告から始まりました。安吾の甥にあたる村山政光氏(松之山在住)がこの2月10日に亡くなられた、と言うことをはるばる松之山から来られた高橋主計さんが報告されました。この冬、凍結路面で転倒されて負傷し、それからはみるみる体力が弱ってしまい、肺炎を患い、ついに復することなく鬼籍に入られたとのこと。生前の安吾を知る人材がまたひとり居なくなってしまい、残念なことです。ちなみに、今回の壇上脇には、安吾と三千代夫人の肖像写真と並んで、村山政光氏の遺骨の入った骨壷が並べられました。

今回の特別イベントでは、京都のロックバンド「風博士」ボーカルの杉山拓さんを特別ゲストに招いて、白いガット弦ギターによる弾き語りで、持ち歌「シャボン玉飛ばない」等々披露されました。MCで杉山さんが安吾の作品の中で好きだといっていたのは「ピエロ伝道者*1」とのこと。立命館大学に通っていた頃から安吾が大好きで、バンド名の由来にしたくらいだから、この安吾忌で持ち歌を披露できたのはたいへん光栄であること。それから愛読している講談社文芸文庫 *2で解説を書かれている川村湊さんと、会場で生で会えたことにはかなり感激されているご様子でした。

今年もいろいろな方がスピーチされました。毎年(19年連続!)来られている手塚眞さんのスピーチでは、会場にたまたま来られていた赤塚不二夫さんの長女赤塚りえ子さんを突然お立ち台へ招きだしてご挨拶をさせ、会場内はにわかにサプライズ状態になりました。ひきつづいて、NHK新潟アナウンサー荒木美和さんからは、安吾の読書体験等と新潟との思わぬ縁についてのスピーチをいただきました。新潟市文化政策課課長斎藤直さんからは今回の安吾賞についてのご報告等々。新潟安吾の会からは福地克典さんのスピーチでは、会場内での安吾グッズの物販案内と、新潟県内の映画館の歴史を綴った本を紹介されました。

ひきつづいて安吾資料室学芸員岩田多佳子さんのスピーチでは、林忠彦氏撮影の有名な写真(紙くずだらけの書斎で執筆している安吾)に写り込んでいる「危険な関係*3」についてのさまざまな考察が興味深かったです。まず、件の書斎写真は昭和何年のいつごろかという時期特定作業から始まって、そして伊吹武彦による訳本のいつ発刊されたバージョンなのか、かなりつっこんで調査されてました。同定する資料が少なくて探求はかなり苦心されてた模様です。ただ、話が時間的に長くなりすぎたため、途中で打ち切られてしまいました。だけど内容は興味深かったです。

ひきつづいて、文芸評論家川村湊さん、蒲田・伊東時代の安吾を世話された高橋旦さん、深夜叢書社代表齋藤愼爾さん、桐生安吾を語る会奈良彰一さん、文芸評論家関井光男さん、文芸評論家若月忠信さんのスピーチを楽しみました。

そして、後半いよいよ安吾カルトクイズです! 賞品が、壇上脇テーブルにつぎつぎと並べられました。安吾生前初版本や直筆色紙(複製版)等々盛りだくさんです。とくに『青鬼の褌を洗う女』初版本を司会者が掲げたときは、会場内にどっと歓声が湧きました。作者自身も愛着を強く抱いていた作品ということもあって、読者側からも関心が強いことが窺えました。しかし、肝心のクイズは、相変わらずの難問ぞろいです。第一問から「『わたしは神の国に行こうとしながらも地獄の門を叩いてしまう人間だ』という冒頭から始まる作品は何でしょう。二者択一で、A『いづこへ』B『私は海を抱きしめていたい』どちらでしょう」 そんなのわかりません。けっきょく10問とも適当に○をふったところ、正解はわずか4問でした。賞品はあきらめました。残念です。ちなみに、今年の最高数正解者は9問でした。わかる人にはやすやすとわかるのです。「カルトクイズ」たるゆえんですね。

そしておしまいでは、これも恒例、坂口綱男さんのスピーチで〆になりました。安吾忌は、これからも続けていきたいので、(ファンのみなさんは)大人しくならないで、お気兼ねなくどんどん騒いで盛り上げて欲しい、かつて安吾忌といえばわたし(=綱男さん)のスピーチなんかそっちのけで、ファンが一方的に騒いでいるのがあたりまえだったくらいだから、という趣旨でした。過去の安吾忌についての貴重なご証言でもあったと思います。

なにがなんだか盛り上がっているうちに2時間半はあっというまに過ぎました。

2次会組は、近所の居酒屋に突撃して、おおいに盛り上がっておられたと察せられます。

 

*1:http://www.aozora.gr.jp/cards/001095/files/45716_23676.html(青空文庫)

*2:風と光と二十の私と (講談社文芸文庫)

*3:asin:4003252314

安吾忌
壇上の「安吾忌」の書
 
遺影
安吾と三千代夫人の遺影など
 
風博士 杉山氏
「風博士」ボーカルの杉山拓さん
 
風博士 杉山氏
NHK新潟アナウンサー荒木美和さん
 
カルトクイズ賞品
カルトクイズ賞品
 
坂口綱男さん
坂口綱男さん
 
会場の様子
会場の様子

執筆: 吉岡和年
  福島県在住の安吾好き歴20余年。高い知性とおっちょこちょいを併せ持つ安吾が大好きです。さいとう名義で安吾MLを管理したこともありました。
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