イベント案内

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■雪の安吾忌
鈴木 良一

 新潟の安吾忌は雪でした。暖冬の続く北国ですが、降り続く雪の中での安吾忌というのは何年振りでしょう。

 今年の新潟市秋葉区大安寺の坂口家墓所での墓前祭は、墓所から程近い大安寺集落センターでの講演会から始められました。墓前祭ではこれまで大変お世話になってきている、大安寺自治会や老人会の方々への御礼と安吾通じた交流をしたいとの思いから企画したのが、大安寺集落センターでの講演会でした。

 坂口安吾の学んだ東洋大学は現在、坂口安吾の資料を集めその業績の評価を進めています。生誕百年を記念して公開講座や記念講演、シンポジウムを催し、その成果を『無限大な安吾』としてまとめています。二〇〇九年二月十四日から三月八日まで新潟歴史博物館で開催された「安吾を育(はぐく)んだ新潟・人・歴史」展に出品された、安吾の作品「世に出るまで」の自筆原稿は東洋大学図書館が収蔵するものです。そうした研究を進める東洋大学の教授の中から今回は、新潟の湯沢町出身の山崎甲一教授が来てくださいました。

 雪の中大安寺集落センターには百名近い方々が参会し二時から主催者の挨拶の後、山崎教授から「安吾と現代」の講演を受けました。山崎教授は安吾の「石の思い」や「ふるさとに寄する讃歌」の一文を抜粋した手書きのテキストを配布して講演をしてくださいました。安吾が生きていたらこの索漠とした社会をどのように観じたかを、安吾の自然観をキーワードに指摘していました。アナログの時代相が急速にデジタル化し、人々が「耳を傾けること」、「立ち止まること」そして「手で書くこと」を忘れて、物事を性急に思いつめての結果だと語ってくださいました。自然の中で、砂浜の上で、満ち足りた気分にひたる安吾の「文学のふるさと」に学ぶべきことは多いとの指摘です。キーボードを叩き、気忙しく毎日を省みることもなく過ごす自分を反省しました。自然へ耳を傾け、足を止め、言葉を文字を手触りすることを、心がけてきたつもりではあるがやはり忘れている。大いに自分を知る良い機会となりました。

 一時間程の講演の間に雪は、二十センチは降ったであろうか。墓前祭はしんしんと雪の降りしきる中で執り行われました。

今回の講演会に尽力してくださった東洋大学校友会、新津安吾の会、安吾の会の皆様に御礼を申し上げると共に、講演会を来年も引き続き開催してくださるようお願いいたします。(安吾の会会員)


新潟安吾忌

新潟安吾忌
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