イベントレポート

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■「安吾引っ越し記念日及び安吾忌の集い」〜安吾に捧げるコンサート〜


吉岡和年

  3月6日18時より桐生「芭蕉」全館貸切で開催されました。今回が第20回目という節目になりました。目測ですが、およそ50〜70人位は集結していたかもしれません。とにかく「芭蕉」店内は、先代店主小池魚心さんによる昭和12年創建当初から何度も増築を繰り返しているので、内部は迷路みたいで複雑怪奇です。また、見たことも無いような調度品があちこちに飾られていて、レトロムード満点です。入り組んだスペースのあちらこちらの椅子に本日のゲストがところせましと腰かけている、という状態で、動員の全貌はぱっと見にはつかみにくい状態でした。のっけから不思議なムードでした。

玄関前吹き抜けに簡単なステージを設けて、そこを「とりあえずの舞台」として、桐生安吾忌開始です。すぐ頭上には先年復旧されたばかりの棟方志功作壁画が掲げられており、会の進行を、静かに見守ってくれているかのようでした。

まず、「安吾を語る会」主宰奈良彰一さんによる挨拶及び司会進行で始まり、続いて亀山桐生市長、坂口綱男さん及び高橋主計さん(松之山安吾の会)によるスピーチが行われ、そして、乾杯しました。
それから引き続いて、千賀ゆう子さんによる作品朗読を楽しみました。今回は、桐生にまつわるエッセイ主体ということで、「桐生通信」から4編(「田舎のメインストリートから」「ヘプバーンと自転車」「存在しない神社のお祭り」「スコア屋でないゴルフ」)、「桜の花ざかり(明日は天気になれ)」を朗読されました。新美桂子さんによる打楽器伴奏も付き、軽妙な内容のエッセイに華を添えていました。
それから引き続き、ミニコンサートということで、生明麻衣子さんのフルートと、新美桂子さんの打楽器伴奏とによる、サティへのオマージュ曲(グノシェンヌのテーマを用いたもの)をご披露いただきました。

吹き抜けでの出し物が一段落終わった後は、参列者めいめい自由に「芭蕉」館内の好きな席に散らばって、そして座って、飲んで、食べて、自由に語らいました。安吾忌なのですが、やはり、安吾のことはほとんど語るわけでもなく、めいめい好き勝手に雑談です。ほとんど東京での安吾忌と同じノリです。
また、今回は「芭蕉」ならではの趣向ということで、ふたたび、1階や2階の各部屋にも会場を移して、作品朗読とミニコンサートをご披露いただきました。

今回は、芭蕉としても「全館貸切」という大所帯なイベントということで、2階の和室にも案内してもらえました。そこに20名以上も腰かけて宴会状態になりました。この和室の存在にはちょっと驚きました。複雑怪奇な建築物のてっぺんにあのような広間があるのは、予想できませんでした(以前に芭蕉を訪問したときは、一階土間で馬小屋カレーを食べただけだったので)。
芭蕉は本当に奥が深いです。多分、安吾さんも生前知り得なかった空間もたくさんあるのではと思います。チャンスがありましたら、ぜひ訪れてみてください。

昨年と今年とで桐生安吾忌を見に行きましたが、とにかく一イベントとして、盛り上げるムードが高いのには、驚かされます。安吾ファン内輪だけのものとかではなくて、安吾論云々難しいことは抜きにして、まず、音楽や朗読が主体で、エンターテイメントに徹してて、楽しいです。このモチベーションの高さはいったい何処から来るのだろう? 安吾さんが最晩年に、この粋な街に移り住んだのは、いったいどういう縁だったのでしょう? 偶然なのかもしれませんが、すべてが偶然とも言い切れないような気もしました。(吉岡和年)

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