イベントレポート

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■『坂口安吾生誕祭103』レポート
福地 克規


 10月の第3週は、週末の天気が崩れると天気予報が告げていた。なので、前日までは、心のテルテル坊主に晴天を願いながら過ごしていた。当日、目が覚めたら、快晴とはいかないけれど、空が泣きだすような気配は、感じられなかった。

 今年の『生誕祭』は、この7月に開館した“安吾 風の館”を核として、新潟市中央区西大畑で行われる。愚生は、生まれも育ちも西大畑であり、“安吾 風の館”の周辺は、よく遊びまわった場所でもある。そのため、今年の『生誕祭』が待ち遠しくて仕方がなかった。

 第2部、第3部の会場である新潟教育会館にて、準備が一段落して休憩していると、第2部記念講演「坂口安吾の戦後の方法」の講師である浅子逸男さんが到着した。浅子さんとは、『坂口安吾研究会』や『安吾忌』にて、幾度かお会いしている。が、到着した浅子さんの姿を見て驚いてしまった。髭をたくわえ、サスペンダーにミッフィーのネクタイを結んだ、ダンディな紳士がそこにはいたのである。何かイメージと違う… もっと研究者然としたイメージで、愚生がインプリンティングしていたからだ。

 しばらくして、第3部の『安吾を語る』に出演する千賀ゆう子さんが到着した。千賀さんとは、初めてお会いしてからもう20年近くたってしまった。前述の浅子さんとは違い、千賀さんはいつお会いしても変わらない。打ち合わせでは、舞台に対する強い思いを垣間見ることができた。

 残念ながら会場準備で、第1部の坂口綱男さん解説の“安吾 風の館”見学会は参加できなかった。第2部の「坂口安吾の戦後の方法」では、名人芸の漫談を聴くように、時間を忘れて聴き入ってしまった。特に、後半の作品がより好きであるというのは、愚生も同じ傾向があるので、妙に親近感をいだいてしまった。また、最後の方に話した、

 「自分(安吾)のやっていることが、安吾の文学」

という一言には、コレダ、と、思ってしまった。

 講演の中で、安吾以外の話題の印象深いものを箇条書きにする。安吾については、いずれ浅子さんが、本や論文という形で発表なさると思うので、それまで待っていただきたい。愚生の文章では、その真意や面白さを伝える自信がないのが、本音であるが…

・林不忘の父親は、佐渡で北一輝を教えており、親交もあった。また、不忘は大杉栄とも親交が深かった。不忘を軸とした不思議な三角形を描けること。

・花村萬月が浅子さんの勤める花園大学の客員教授になってもらったので、京都の街を案内したときの出来事。スキンヘッドで凄みがある花村萬月さんの風貌は、通常、アウトローにみえる。しかし、妙心寺(花園大学はここが母体)へ案内すると、違和感がなかったこと。

 しばしの休憩のあと、第3部の千賀さんの語り『桜の森の満開の下』が始まった。楽士の高橋一志さんは、昨年の『生誕祭』や今年5月に松之山で開催された『安吾まつり』でも、千賀さんとコンビを組んでいる。エフェクトのかかったエレキギターが、語りの世界の雰囲気をさらに盛り上げていく。また、千賀さんの演出で、女の台詞を上方口調にしているのに気がついた。芝居も含めると、千賀さんが演じる『桜の森の満開の下』は、10回以上見ているが、女のコトバが上方口調にしているのは、初めてのような気がする(愚生が鈍いので気づかなかった可能性もあるが…)。都と鈴鹿の森にある途方もないギャップが、口調一つで浮き彫りになる。語りや芝居の奥深さに、あらためて気が遠くなる。

 愚生が新潟の西大畑に生まれ育ったので、普段は何も感じない。当たり前の景色であるが、今回のように多くの方が訪れる催しがあると、いつもは気づかないものを感じることができた。もし、西大畑にいらっしゃるときガイドが必要なら、お気軽に連絡をしてください。よろこんでご案内します。

 最後になりましたが、解説をしていただいた坂口綱男さん、岩田さん、興味深い講演をしていただいた浅子さん、素晴らしい語り世界へ誘ってくださった千賀さん、高橋さん、裏方として東奔西走していただいたスタッフの方々、そして、愚生にとって当たり前の景色を新鮮にしていただいた来場者の皆様、心から感謝しています。ありがとうございました。  (安吾の会)

写真1
篠田新潟市長挨拶
 
写真2
浅子逸男氏講演
 
写真3
千賀ゆう子朗読__高橋一志
 
写真4
千賀ゆう子朗読゛
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