ライスカレー100人前事件
安吾流!熱愛のススメ
「桜の森の満開の下」
鈴鹿峠に住み着いた山賊は、ある日攫ってきた美しい女の命令により6人の女房を殺すこととなる。それをきっかけに女にかしずく生活が始まるのだが、やがて女の挑発により都に移住する。都での生活は女の興じる首遊びが中心となり、その生活に退屈した男は山へ帰ることを決意。山へ帰る途中、満開の桜の森の下へ来ると負ぶっていたはずの女は鬼に変わっている。慌てて絞め殺すが、息絶えた女を見ると元の女だった。
息絶えた女の姿は消え幾つかの花びらになり、その花びらを掻き分けようとした男の姿も消えてしまう。あとには花びらと冷たい虚空がはりつめているばかりであった。

説話体の物語であるために、淡々と物語が進む印象を強く受けるかもしれない。しかし、あえて心理描写を捨象することによって浮き彫りとなる山賊の熱情は、きっとあなたの恋の意欲をさらに激しく燃え上がらせるだろう。
 
「夜長姫と耳男」
ヒダ随一のタクミの弟子である耳男は、夜長の長の家に招かれ夜長姫のためにミロクボサツを彫るのだが、それから完成まで三年もの間夜長姫の笑顔が頭から離れなかったために、今生の最後の願いとして夜長姫の像を新たに彫ることとなった。だが、やがて疫病がはやり村人が死ぬたびに笑顔の輝きを増し、村人全員が死んで欲しいという姫が生きていること自体に恐怖を感じた耳男は…

三年間一人の笑顔に惑わされ続け、その想いを芸術に昇華しようとした男と、想いを受け止めてもなお果ての見えない無邪気な笑顔を持つ少女。この二人の関係は造られた像のようにあまりにも皮肉な運命を辿らなければならないのだが、夜長姫の「好きなものは咒うか殺すか争うかしなければならないのよ」という言葉通りとても緊縛している。こんな二人のように、芸術的な激しい恋愛を心に想うあなたにおすすめの一作。
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