ライスカレー100人前事件
恋愛失敗体質の解毒療法
「青鬼の褌を洗う女」
サチ子は空襲で母を失い、初老の会社の専務久須美に引き取られ、久須美の大きな愛情の中で満ち足りた生活を送る。だが、愛情の中に退屈と孤独が潜んでいることに気付いてしまったサチ子は墨田川という力士と浮気をしてしまう。結局久須美のもとに戻るのだが、墨田川との一件によって久須美の冷酷な魂に宿る孤独を知り、鬼のように達観した人間だと思いながらも、青鬼の褌を洗う幻想に懐かしさを覚える。
幸せと退屈。観念と現実。そして、恋をする女と男。相反するけれどそれぞれが交じり合った環境が舞台となったこの作品は、戦争という混乱した空間を飛び越えて現代でも問われ続ける、「生き方」という問題を描き出す。

果たしてあなたは目の前に出された選択肢を、久須美のように、墨田川のように、そしてサチ子のように選択するだろうか。
 
「紫大納言」
好色家の紫大納言は、ある夜月の国の姫が寵愛する小笛を拾い、その笛を探しに下界へと降りてきた天女に欲情を懐く。どうにかして天女を自分のものにしようと思案していると、有名な袴垂れの盗賊達に笛を奪われてしまう。天女は取り戻すように訴え、大納言は笛を取り戻すために盗賊のもとを訪れるが、盗賊達に打ちのめされてしまった。笛を取り戻せなかった大納言は、天女のことを思いながらすくった一片の水に吸い込まれて消えてしまう。

五十の齢でありながらもなお好色漢でありつづける大納言が発するセリフは「桜の森の満開の下」と同様に叙事的な説話体であることも手伝って、一層の迫力がある。だが、肉欲と画策の到達点は、むなしさの満ちた手のひら一杯分の水であった。相手を愛しすぎるあまりにアノ手コノ手を尽くし過ぎるあなたは、この紫大納言と同じ道をたどらない様にご注意を。
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