ライスカレー100人前事件
銀幕の安吾世界
「白痴」
文化映画の演出家見習いの伊沢は、ある夜から隣に住む白痴の人妻を匿い生活をすることになる。だが、女の思考はただ空虚であり、肉体は待ちもうけた肉欲に過ぎなかった。
 四月十五日日に空襲がおこり伊沢は白痴の女と逃げ出すのだが、その最中伊沢の問いかけに一瞬だけ反応した女の稚拙な頷きに感動し、女を抱いている事実に、そして白痴の女に対して誇りを持つ。しかし、空襲から逃れたときに側で眠る女に豚の姿を重ね見るのであった。

一九九九年に手塚眞監督の手によって映画化されたこの作品。映画では原作以上に様々な内容が盛り込まれ、坂口安吾の『白痴』の世界観に手塚眞氏の表現力が見事に織り込まれている。伊沢役は浅野忠信、白痴の女役は甲田益也子。現在はDVDも発売され、手軽に原作との読み比べができるのも嬉しい。是非、両者の世界観からあなただけの「白痴」観を探し出していただきたい。
 
「肝臓先生」
戦争終結から二年目の八月十五日に私は友人の彫刻家Qに招待されて伊東へ赴き、そこで烏賊虎という漁師の世話になる。そこで、烏賊虎から戦時中に伊東で流行性肝臓炎と戦い、その肝臓炎と戦うために医師会の健康保険部と戦い、軍の軍医と戦い、そして小島から来た少女の父親を助た帰りに船上で敵機に撃たれ死んだ赤城風雨先生―通称肝臓先生―の話を聞く。この話に感慨無量となった私はQの彫った肝臓の石像に碑銘を書き記した。

一九九八年に「カンゾー先生」というタイトルで公開され、監督は今村昌平。肝臓先生は柄本明が演ずる。映画では原作よりも漁村の人々をはじめとした人と人との交流が重点的に描かれているが、原作同様その熱さは健在だ。あなたは、この奇妙だけれども愛さずに入られない肝臓先生とカンゾー先生。どちらがお好みだろうか。
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