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「女体」

 戦後、「白痴」「外套と青空」に続き、性を主題にして書かれた話題作。

 連作長篇の第1作で、顔見せ程度の登場人物が多いのも完全に長篇のパターンであるため、本作だけ独立して読むと尻切れトンボの感はまぬがれない。次作「恋をしに行く」の発表は4カ月後。間隔が空きすぎたせいか、長篇は未完に終わってしまう。

「女体」というタイトルは大胆だが、内容にはほとんど「情痴小説」の要素はない。しかも非常に観念的な文章で、読みにくい。性が主題、というより、性にからむ心理の変遷・交錯といったものが主題なのだろう。安吾が偏愛したコンスタンの「アドルフ」やラクロの「危険な関係」など、フランス心理主義小説とのつながりも濃厚だ。

 心理描写はすべて谷村の視点で書かれる。彼自身の心理と、彼が分析する素子や岡村たちの心理は、そうとうに奇怪でねじくれている。ねじまがった心を、ねじまがったままに書こうとしているから、文章が読みにくくなるのかもしれない。

 安吾は早い時期から、たとえば「姦淫に寄す」などで、内面にだけ吹き荒れる性の葛藤を追求してきた。外面は何事もなく終わっても、それはそれでドラマティックな小説になるが、本作は不穏なものが表に出てくる。極度のストレス状態が言葉や態度に漏れ出てしまい、それに伴って、各人の心理状態もまた全く違った方向へうごきだす。

 心理小説のはずが、不可解な行動の小説に変わる。

 理知と平穏を愛する病弱な谷村が、こらえきれなくなると突発的に師を面罵する。「肉体の声」とは、そういうものだ。それが日ごろ前面に出ているのが素子である。感覚、感情、肉欲、そういうものから言葉が発せられるので、素子は誰よりも強い。

 献身的な介護人の素子と、情欲に貪婪な素子と、矛盾なく並立する。

 素子のモデルは矢田津世子であると「戯作者文学論」で安吾自身が暴露しているが、それほど津世子のイメージが投影されているようには見えない。ただ、安吾と津世子がもし結婚していたら、こんなふうに互いに理論武装して、いがみ合うばかりの関係になっていたかもしれない。安吾の空想は生々しく、それだけに事実ありえそうで、これを書くことによって自ら傷つき続ける安吾の、痛々しい思いばかりが後に残る。

 
(七北数人)  
 
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