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「文芸時評〔1936.9.27〜10.2〕」

「文芸時評」のタイトルで安吾が発表した初めての時評。7回にわたって新聞連載された。

 文芸時評には概して二とおりのパターンがある。

 一つは時代の風潮のようなものをトータルで掴み出そうとするもの。秋山駿などが得意としたやり方で、現代でもこれが主流かと思われる。時代精神まで提示できれば時評の値打ちが上がって見えるからだ。しかし、たまたま同じ月に発表された作品群から一つのテーマを抽出するので、強引なこじつけに陥りやすく、個々の作品の本質を逸れてしまうことも少なくない。作品を個別に評価すること自体、必須ではなくなる。

 もう一つは、作品に仮託して評者自身の文学論や自己の内面を語ろうとするもの。安吾のは本作冒頭で宣言しているとおり、すべてこれである。自分の書かない(書けない)分野の作品も対象になるため、さまざまな角度から文学論をくりだせる。ただし、個々の作品の評価付けが重要であり、辛口批評になりやすい。自分のめざす文学の最上とピッタリ合う作品など、この世にはほとんど存在しないからだ。

 そういうわけで、本作も辛口に徹している。全体に共通して言える根本は、文章の技術や新しい技法をいくら取り入れても、そこに必然性やホンモノの興趣がなければダメだということ。大御所の作品でも大半がやっつけ仕事で、文学として論ずるには足りない。

 川端康成「火の枕」(後に『雪国』に組み込まれる短篇)と保田與重郎「日本の橋」については、その文章表現を褒め讃えているが、小説の興趣から見ると、川端のは緊密すぎて苦しい、保田のは逆にゆったりモードだが「文学の懊悩」が足りない、と言う。

 あちらを立てればこちらが立たず。手放しの絶賛がありえないのも道理だ。

 中で新人の1作だけ、「第一流」ではないが「好短篇」と褒めている。

 岩越昌三の「餓鬼」。世渡りがヘタで貧窮する主人公のいちいちの反応が「天使」か「童児」のようで「世に珍しい柔かさ素朴さ悲さに溢れてゐる」という。

 今では忘れ去られたマイナー作家。たぶん当時から話題にならなかったのだろう。安吾の評価が彼にだけ甘いのは、世評の低さが不当だと訴えたかったからだ。評価する者が多ければ、作品は残る。文芸時評の価値はこういうところにもある。

 
(七北数人)  
 
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