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「小さな部屋」

 男女5人の神経症的かつ性的な煩悶を描いた初期の野心作。

 文壇デビューから1、2年の間、安吾の書く小説は筋があいまいで詩的なものが多かったが、1932年から33年にかけて、本格的な小説を志した安吾は、さまざまなスタイルに挑戦した。本作はその一環で、複雑にねじくれた重たい作品になっている。

 誰とでも寝る白痴的な女王の浅間麻油。暴力的な毒舌家だが憂鬱症でもある韮山(ニラヤマ)痴川。痴川を殺すと宣言して回る陰性なマゾヒスト伊豆。冷酷なニヒリスト小笠原。華やかだが寂しげな影をまとった孤踏夫人。みな名前もヘンだが、中身もかなり異常な感じだ。

 骨格は、女王然とした麻油をファム・ファタール(男を破滅に導く悪女)に仕立てた恋愛小説だが、誰もがみなニヒリズムに毒され、あくどく沈淪しているので、「マノン・レスコー」のような劇的なロマンには発展しない。

 自殺や殺人や乱倫へ、簡単によろめいてしまいそうで、なかなか踏ん切りもつかない、ぐしゃぐしゃな関係が延々と続く。

 小説としての眼目は、ストーリーよりも、彼らの心理分析にある。

 安吾が好きだったコンスタンの「アドルフ」やラクロの「危険な関係」のような心理主義小説の手法で、5人の心理を順繰りに、均等に、深く掘り下げていく。ゆがんだ欲望や、底の見えにくい深層心理、移ろい惑う刻々の呟きなどを記すことにより、主人公たち自身も知らなかった自分が発見されてゆく。

 安吾は「女体」や「花妖」など、おもに戦後の長篇でこうした心理主義小説を試みるが、本作はその最も早い実験といえる。

 作品内で小笠原が「俺達の複雑な生活では、最も人工的なものが本能であつたりしてゐる」と呟く。だから自分が心底やりたいことを見つけるのも難しいが、「動物的な野性から文化を批判し、文化を縦横に蹂躙しながら柄に合つたものだけを身につけて」行くならば、本当の自分、本物の文化が見つかるのではないか、という意味のことを言う。

「日本文化私観」や「堕落論」に至る思想の根っこが、無造作に転がっていて面白い。

 
(七北数人)  
 
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