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「餅のタタリ」

 最晩年の1954年正月に発表されたファルスの怪作。

 正月にふさわしく「餅」が出てくる短篇だが、ウドン好きの上州では、たとえ正月だろうと餅など食べず、新年特製ウドンを食べるという。本当かどうかは知らないが、これがまあ落語のマクラに当たる部分で、そういう上州のあるムラのお話に入っていく。

 ムラには二軒の豪農があって、巨大な池を庭にしつらえた円池(マルイケ)の平吉と、巨樹を神木に仕立てた杉の木の助六、この両家が例によって犬猿の仲。

 ある日、円池家に鯉泥棒が入り、そいつが焼き餅を落として行ったのが騒動の元になる。なにしろ、このムラで餅を食うのは杉の木家だけだからだ。

「餅を食う奴にろくな奴はいやしない。とッちめてくれるぞ」

 スゴい論理で糾弾が始まる。「証拠より論」、助六がどれだけ証拠を出そうが、村人たちは受け付けない。日頃の感情がどっちに傾いているか、と、屁理屈のうまいヘタによって、勝敗が決まるのだ。こういうところは初期の「村のひと騒ぎ」をほうふつとさせ、単純に笑えて楽しい。

 しかし、気の毒な助六の目が濁った光を放ちはじめるあたりから、物語は不気味な色を濃くしていく。5カ月後に発表される「保久呂天皇」そっくりの構図。ここではまだ、神がかりにまでは至らず、落語のオチのような終わり方で安心だが、だからといって不気味さが消えるわけではない。

 助六の突発的な行動を評して、村人の一人が「ヒットラーの策戦よりも意表をつくものだ」とつぶやくのが象徴的だ。

 復讐に取り憑かれるほどの狂気をうみだす人間関係も恐ろしいし、次にはその狂気がうみだす、意表をつくテロ行為も恐ろしい。

「餅のタタリ」のままで終わっていてくれればいいが、と願うほかない。

 
(七北数人)  
 
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